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旦那様は毎晩毎晩、いらしてくださった。
今まで通り、アタシの知らないお話を聞かせてくださったり、
お酒を飲んだり…。
躰を求められるのは、希だった。
他の旦那様なら、考えられない…。
旦那様に逢う度に、アタシは暖かくなれた。
「旦那様…。わたくし、旦那様のお顔を見るだけで、嬉しいんですの」
「私もだ。紫月の顔や声…全て欲しい」
「まぁ…。わたくしで…よいのですか?」
「お前がいいのだよ…」
優しい優しい…旦那様。
お傍に…居たい。
限られた刻の中だけでなく…。
「旦那様…」
愛しい。愛しい。愛しい。
忘れていたココロが、そう叫んでいた。
然しアタシは遊女…。
此の想いは…口にしてはいけない。
そう、アタシが想っている矢先だった。
「紫月…私はお前が好きだ。傍に置いておきたい」
「旦那様…」
口にしては…イケナイ。
そんな考えとは裏腹に、アタシは言葉を紡いだ。
「わたくしも、お傍にいとうございます…」
「…もう少しだ…。もう少しだけ…待ってくれ…」
「いつまででも…」
深々と、頭を下げていた。
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