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伍
それから…数ヶ月。
その間も、旦那様は毎晩いらしてくれた。
アタシの様な遊女を…愛してくださった。
「紫月…」
旦那様のお声で、アタシの名を呼んでくださるのが、嬉しくて堪らなかった。
愛しい…このお方が。
そんな想いが、溢れていた。
平和な夜が過ぎていた…。
外はもう…桜が咲いていた。
旦那様は襖を開け、桜を見ながらお酒を飲んでいらした。
アタシも、旦那様の隣に…そっと寄り添って、共に桜を見ていた。
然しある夜…旦那様が初めて、アタシの前で悔しさを露わにした。
「すまない…お前をいつまでも迎えに来られなくて…」
「よいのですよ。わたくしは、いつまででもお待ちしております…」
肩を落としている旦那様のお手をそっと握る。
「然し…。私は早く、お前を此処から出してやりたい…」
『わたくしも早く旦那様のお傍に居たい』
口に出しそうになったけれど、アタシは遊女…。
それだけは、お頼みできない…。
「紫月…。すまない…。すまない…」
旦那様はアタシに謝り続けた…。
なんと痛々しいお姿…。
アタシなぞの為に…こんなに…。
「旦那様…どうぞそんなに謝らないでくださいまし…」
「お前を早く…護ってやりたいのに…」
旦那様は拳を強く握られた。
アタシなぞの…遊女の為に…。
「早く…お前を傍に置きたいのに…」
こんな痛々しいお姿…。
アタシの抑えが…利かなくなった。
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