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旦那様のお手を、アタシもキュッと両手で強く握った。
そして…禁忌を口にした。
「旦那様…此処から出ましょう」
「紫月…?」
旦那様はアタシの顔をはっと見た。
「わたくしも旦那様のお傍にいとうございます。
その為なら…此処から共に、逃げましょう」
旦那様もアタシが言った事は禁忌だと、勿論知っていた。
然し…互いに、想いが強かったのだ。
旦那様も、止めなかった…。
「紫月…。…もし知れたら…共に殺されるかもしれないぞ」
「承知の上でございます。でも、旦那様となら、わたくしは…」
「お前は…。本当によいのだな?」
その問いに、静かに頷く。
「私も…お前となら…この命、惜しくない」
「わたくしもです…。旦那様となら…何処へなりと…」
旦那様も…頷いてくださった。
「紫月…」
旦那様の体温が躰中に伝わる。
そしてスッ…と、旦那様がアタシの手を引いて立ち上がった。
「…行こう」
「…はい」
アタシ達は、姉さん方がいる玄関へ降りていった。
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