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「あら。旦那様、今日はお帰りが早いのですねぇ」 此処の女将が気づいた。 「私も明日は早いのでな。今日はこれでお暇するよ」 「女将さん、旦那様を其此までお見送りして参ります」 旦那様に続き、笑顔で言うと 「はいよ。早く戻ってくるんだよ」と疑いもなく外へ出してくれた。 旦那様はもう此処の御得意様故、多少甘かったのだ。 アタシと旦那様は小さく頷き合った。 「それじゃ、また来るよ」 そう女郎宿に言い残し、旦那様は歩き出した。 アタシは女将さんに「行って参ります」とにこやかに言い、宿を後にした。 少し歩いたら…桜が舞い散っていた。 歩いている間も、旦那様はアタシの手をお離しにならなかった。 旦那様に手を引かれ、アタシは宿から遠ざかっていった…。
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