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「紫月の奴、遅いねぇ」
宿では女将が煙草を吹かしながら奥の部屋で他の女郎と話していた。
「まさか逃げたなんて…ねぇ」
ひとりの女郎が言う。
しかし女将は
「あいつにそんな根性はないだろうよ。
あの旦那様に気に入られる前はろくに客を取れなかったんだから。
どんな仕打ちに遭うか…目の前でも見てる」
と相手にしなかった。
「そうよね…。紫月は此処へ来て長いものねぇ…。
見せしめも何回見た事やら…」
「そう…。殺されてきた女達を何人も見てるんだから…」
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