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「わたくし、旦那様が来てくださるの楽しみにしていますの」
紫月の美しい笑顔。
「旦那様のお話を聞くの、楽しいのですもの…」
軽やかに踊る声。
「旦那様、さぁ…」
白くか細い腕に、しなやかな指。
「紫月…お前は他の遊女とは違うな…」
「あれ、そうですか?…わたくしいつも姉さん方にいたぶられるんですよ…」
酒を注ぎながら、何ともないと言った様子で言う。
この遊女は…どれだけの苦痛を此処で味わい続けていたのだろう。
先日、ちらりと見えた足の痣。
理由は問わなかった…否、問えなかった。
私はいつしか…紫月を此処から救いたいと何処かで思い始めていた。
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