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参
「なぁ、紫月…」
「はい、何でしょう?」杯をコトンと膳に置きながら。
「お前を、抱いていいか?」
「旦那様…」
少々驚いてしまった。
こんな事を聞かれたのは…初めてかもしれない。
他の旦那様は…何も聞かずに躰を求めてきたから…。
アタシは微笑んで答えた。
「旦那様、わたくしは遊女ですよ…」
「…………」
旦那様は少し考えている様だった。
そして間を置いてから、
「…そんな事を…簡単に言うな…」と、真面目なお目で見られた。
旦那様の言葉を、アタシは理解できなかった…。
然し「紫月…」とアタシの名を呼びながら…接吻してくださった。
遊女は己の躰を売るモノ…。
どの様な旦那様でも、お相手するのがアタシの役目…。
然し…この旦那様は…何処か違った。
今宵まで、何度いらしてくれたろう。
もぅ、数え切れないのに…今宵が初めての接吻。
唇が離れた時、思わず口を突いて出た。
「何故…今宵まで…?」
旦那様は緩やかにアタシの躰を包んでくれた。
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