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それにしても
昼間は真夏のように暑かったけれど、
日が落ちた今の時間は半袖のブラウスだけでは少し肌寒く感じる。
時折街路樹を揺らす乾いた風も
ついこの前まで夏の匂いを孕んでいたはずなのに
今夜はもうすっかり秋のものになっていた。
季節は着実に移ろっていて、
秋が終わるとあたしの嫌いな冬がやってくるってことだ。
脇道に入ると、途端に寂しくなる住宅街の夜道。
大通りを行き交う車の音は聞こえるけれど、
ぽつりぽつりと薄暗い街灯がアスファルトを照らすだけの路地では
住宅のほとんどが雨戸を閉じるか、厚いカーテンを引いていて
数メートル先を歩いてくる人の顔さえ判別できない。
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