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「イブちゃん、ごめんね。呼び出したりして」
「ううん」
「あのさ――」
あたしが向かいの席に腰を下ろすなり何か言いかけた宮本は、
けれど、
こちらへ向かってくる店員の姿に気付いて
思い直したように唇を閉ざした。
水とおしぼりを受け取ったあたしが注文を終える間、
ずっと宮本は頬杖をついて窓の外に顔を向けていた。
店員の後ろ姿を見送って視線を戻すと、
宮本の顔がゆっくりとこちらを向く。
昨日の今日でお互いに気まずいのは仕方ない。
宮本の顔にはいつもの笑顔はなくて、
きっとそれはあたしも同じだろうから。
「タカの怪我の状態、気になってると思って」
唐突に切り出された言葉に、
あたしは宮本から視線を逸らして、唇を噛んだ。
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