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だからあの時は、 父親顔して馴れ馴れしく接してくる 『お母さんの恋人』が嫌で仕方なかった。 スキンシップなんて言語道断。 それなのに向こうは、 あたしに気に入られようと必死だしね。 まさに悪循環ってヤツ。 半年ほど続いた家族ごっこが崩壊したのは大人の事情。 あたしの存在がどれくらい関係してたのかは分からないけど、 正直ほっとしましたね。 申し訳ないけど、良かったとしか思えなかった。 あの頃を思い返すと 瞬時に記憶は当時に戻って、 『お母さんの恋人』の固い掌が、 ざらりとあたしに触れ、 未だ鼻の奥に居座っている大人の男の匂いが ふっと鼻先を掠めていく。
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