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「おはよ」 あたしは隣りに腰を下ろした王子に手短に挨拶を返して、 机の上に広げた世界史の教科書に視線を戻した。 手っ取り早く周囲をシャットアウトするのに 教科書はかなり有効なアイテムだよね。 別に、 今さら脳内にナンタラ文明の年号なぞを詰め込もうと思ってる訳では 決してないのよ? 「ねえイブ? 今日バイトないんだったら昼ごはん一緒に食べて 午後から俺ん家で勉強しよ?」 香水の甘い匂いが濃く香って、 おそらく、 空気を読めない――訳でも、 読まない――訳でもナイ王子は、 あたしの思惑なんか承知の上で顔を覗き込んでくる。 高くも低くもないけれど、伸びやかで良く通る王子の声は、 低く囁くとやけに甘く艶を帯びる。 よく聞く腰にくる声ってこんなのを言うのかな? まぁあたしには無効みたいだけどね。
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