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顔を上げて遠慮なく不満気な表情を晒すと、 王子はあたしの座る椅子の背もたれに手を掛けて、 更にぐっと近づいてきた。 「土日に会うのは我慢したんだから、 今日は俺の我儘聞いてもらうよ?」 淡い茶色の瞳を細めて、桜色の薄い唇が弧を描く。 顔の距離はシャープペンシル1本分くらい? ほかほかのネタで校内を賑わしてる2人が 教室の最前列でコレは如何なものかと思いますが。 王子ったらバカップルごっこでも始める気なんだろうか? それならあたしの反応は―― 『ぽっと頬を染める』って正解? 無理だけど。 それとも、 『もー近すぎるよー』って恥らっちゃう? ……。 き、きもい。 想像しただけで鳥肌立ちそー 「分かったから。集中させて」 結局あたしはそう言って、 外した視線を教科書に落とした。 ごめん。 バカップルごっこ。 あたしには無理だ。
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