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あたしの7回目の誕生日。 家族3人で食事に出かけた夜の街で たまたま遭遇した若者数人が言い争う場面。 人通りの多い道に面した 駐車場の一画で繰り広げられていたそれは、 たいした間を置かず殴り合いになっていった。 周りの誰もがまるで 見えてもいないみたいに行き交う中、 高校の体育教師だったパパはきっと 教え子と同じ年くらいのその少年たちを 放っておけなかったんだと思う。 お母さんの制止にも耳を貸さずに仲裁に向かったパパは その中の1人が持っていたナイフで刺されたんだ。 その一部始終を あたしは震えるお母さんの腕の中から見ていた。 飛び交う悲鳴と叫び声と、 救急車のサイレンと、 街灯に照らされ横たわるパパの姿と、 血の気を失った苦しげな顔。 アスファルトに拡がる黒い液体。 今でも鮮明に覚えてる――
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