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「イブ? どうしたの?」 訝る声に顔を上げると、 開いた扉を右腕と肩で支える王子の先に 真っ白なタイル張りの廊下が見えた。 廊下とは違って、 大理石調のタイルが敷かれた三和土(たたき)に目を向けて、 再び視線を戻したあたしに、 「どうぞ?」 目が合った王子は、口の端をあげて中へと促した。 その笑顔に挑発的な含みを感じるのは、 あたしの思い過ごしかな? 内心の読めない王子のテリトリーに入ってしまうことに 全く抵抗がないと言えば嘘になる。 だけど、弱みや隙を彼に見せるのも屈辱に思えて、 ほんの少しとはいえ、 確かに感じる躊躇いを押し隠したあたしは、 王子の前に出来た隙間をすり抜けて広い玄関に足を踏み入れた。
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