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「今さら言う?」
心の熱が、すっと引いていく。
「あたしが性悪だってことくらい
ハナから分かってたはずでしょ?」
「そうだったね。
喧嘩の強い男とヤルのが好きなんだっけ?」
なんとても言えばいい――
思いのほか筋肉質の腕が
テーブルをラグの外へ追いやるのを、
冷めきった表情で見届けて、
くすくすと笑いながらこちらへにじり寄る王子を、
まるで液晶画面越しのドラマでも見るような
自分とは関係のない物語を傍観しているような
そんな思いで
見つめた。
濃密な空気を纏った王子の甘い香りが間近に迫り、
少し曲げた指の背が頬をするりと撫でる。
「だったら勉強は後にしようか?」
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