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顔を覗き込まれ、
その眼差しから逃れるように視線を逸らすと、
数回ゆっくりと上下に滑った指は、
胸元に垂れたあたしの髪をそっとすくい上げた。
「ツヤツヤだね」
緩慢に手を引いて、
指先からするりと滑り落ちて行く黒い髪を
王子はうっとりとした表情で見つめる。
「真っ黒で」
同じ動作を繰り返しながら、
「ハリがあって」
熱のこもった声が耳朶を犯すように囁かれる。
「キレイな髪」
戻した視線の先では、
長いまつ毛が色白の頬に影を落としていて、
その瞳の奥にどんな感情が潜んでいるのか、
うかがい知ることは出来なかった。
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