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「トモダチの親がオーナーなんだよ」 「それ友達ン家とは言わないからね」 「大差ないじゃん」 「あるわ! そもそも制服でこんな店入れる訳ないでしょ」 「アルコール飲まなきゃ大丈夫なんじゃない?」 「そーいう問題じゃないの」 「だったら俺のブルゾン着てたらいいよ」 「いらない。あたしは帰るから」 「だぁーめ。連れてくって約束――」 「おい」 面倒クサイだけの益体もない問答は 頭上から降ってきたハスキーボイスに遮られた。 「そこの高校生カップル。店の前で騒ぐの禁止」 黄昏時の逆光で顔やその表情は分からないけれど、 振り仰ぐ先で、長身の人影が硬質な靴音を響かせながら ゆっくりと階段を下りてくる。 歩くたびにシャカシャカって音をたてるのは 片手に提げたスーパーの袋。
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