◆10◆

4/30
前へ
/1202ページ
次へ
「ヒロムさん。ご飯食べさせて」 ぼんやりとその様子を眺めてたあたしの手を引いて、 階段を下りきった王子が、 その人影を見上げて口角を上げる。 「メシならいくらでも食わせてやるから店先で騒ぐな」 CLOSEのプレートが掛かったまだ薄暗い店先に、 階段上の間口から注ぐ夕暮れの光を背負って 背の高い20代後半くらいのお兄さんが降り立つ。 くっきりとした二重瞼に高い鼻梁と肉厚な唇、 肩までの長髪にゆるパーマをかけた なかなかワイルド系のお兄さんだ。 「初めまして」 王子がヒロムさんと呼ぶお兄さんは、 あたしに目を向けて渋い低音でそう言うと、 「えーと――」って首を傾げた。
/1202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

808人が本棚に入れています
本棚に追加