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「ヒロムさん。ご飯食べさせて」
ぼんやりとその様子を眺めてたあたしの手を引いて、
階段を下りきった王子が、
その人影を見上げて口角を上げる。
「メシならいくらでも食わせてやるから店先で騒ぐな」
CLOSEのプレートが掛かったまだ薄暗い店先に、
階段上の間口から注ぐ夕暮れの光を背負って
背の高い20代後半くらいのお兄さんが降り立つ。
くっきりとした二重瞼に高い鼻梁と肉厚な唇、
肩までの長髪にゆるパーマをかけた
なかなかワイルド系のお兄さんだ。
「初めまして」
王子がヒロムさんと呼ぶお兄さんは、
あたしに目を向けて渋い低音でそう言うと、
「えーと――」って首を傾げた。
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