808人が本棚に入れています
本棚に追加
見た目のワイルドさに反して、
人好きのする笑顔と穏やかな口調は
さすが接客業って感じだ。
あたしも余所行きの笑みを顔に貼り付けて
ヒロムさんに会釈を返した。
「堂野衣舞です。はじめまして」
「柴崎大夢です。よろしく衣舞ちゃん」
大夢さんは柔らかに微笑んでお店のドアを開くと、
軽く腰を折り、
すっと伸ばした手のひらを店内へ差し向けた。
「いらっしゃいませ」
え? まじ?
いきなりお客様扱い!?
うぅー。
『帰る』とは言い辛い。
かなり言い辛い。
てか制服で入っちゃって大丈夫なの?
「イブ行くよ?」
あたしの逡巡なんかどこ吹く風、
これっぽっちも気にかける様子もない王子に手を取られて、
あたしは人生初のダイニングバーに足を踏み入れた。
高校の制服を着て。
最初のコメントを投稿しよう!