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甘い香水の匂いが染みついた ジャージ素材の黒いジップアップブルゾンに袖を通すと、 「代わりにイブがあっためて?」 「わっ――ちょ――」 まだ着終わってもいないうちに掴まれた腕と腰を引かれて、 体勢を崩しながら王子の傍らになだれ込む。 「ちょっとーおうじー。まだちゃんと着てないってばー」 「いーぶー。また王子って言ったなー」 あ。 心の中で王子って呼んでるから、 つい出ちゃうんだよね。 「やっぱ、途中で止めるんじゃなかったなー」 そう言って王子は、 あたしの身体をぎゅーっと腕に閉じ込めた。 「は? 何言って――て言うか放してよ!」
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