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「うん。美味しそうですね」 前半は王子に、後半はミッツさんに顔を向けて言うと、 ミッツさんはきゅっと口角を上げ、 「甘みが足りなかったらこのシロップを入れてね」 と言い置いてカウンターへ戻って行く。 あたしはその後ろ姿を見送ってから、 すっかり寛いだ様子の王子に目を向けた。 「ねえ」 「ん? なに?」 「ここで食事して帰るの?」 「うん。そのつもりだけど?」 グラスをコースターに戻して、王子が首を傾げる。 「じゃあ。あたしはこれ飲んだら帰るね」 そう口にすると、 綺麗に整えられた眉の間がぎゅっと狭まった。
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