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「えーっと……」
きょろきょろと視線を彷徨わせるあたしに、
王子は探るように瞳を細め、
問いかける声がぐぅんと低くなる。
「イブ?」
王子は頬杖するのとは反対の手を
仰け反るあたしの背後に伸ばして、
あたしの身体を囲うように背もたれを掴んだ。
そのままぐっと顔を近づけられる。
顔ちっちゃ。
隣りに並ぶの嫌になっちゃう――
なぁんて現実逃避は
直ちに軌道修正掛けられたけど。
「何だと思ってたんだよ?」
たまに出るちょっぴり乱暴な口調に
あたしは観念して貝のようの閉ざしていた唇を
開くことにした。
「……連れ込み専用の部屋?」
あたしの上半身を囲っていた手が
力をなくしてするりと離れていく
――と同時に。
「ぶっ――」
背後で誰かが噴き出した。
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