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わ、もしかしてまたミッツさん? 慌てて振り返った先では、 薄手のグレーのニットにベージュの綿パン姿の男子が 片手にドリンクのグラスを持って、 にやにやと笑っていた。 だれ? 年はあたし達と同じくらいだと思うけど、 恰好からして店員じゃないはずだし。 「や。あんなデカいベッドしかない部屋。 誤解されても仕方ないと思うぜ?」 笑いをかみ殺しながら発せられる言葉は 当然だけど、あたしの右側……というか背後? ――に向けられている。 王子が今どんな顔をしているか考えると、 振り返るのが心苦しい。 うん。あくまで少しだけ。
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