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荷物を持って 未だ夢の中にいるお母さんを起こさないように 抜き足でそーっと居間を横切る。 キッチンの冷たい水で洗顔とハミガキを終えると、 髪を梳かすのもそこそこにスニーカーに足を突っ込んだ。 あ。そっか、雨…… 玄関のドアを開けて改めて気づく 共用廊下の小屋根を打つ雨音。 あたしは、もう一度部屋に戻って、 着ていたダッフルコートを脱ぎ、 薄手のパーカーに着替えて、 その上からレインコートを羽織ることにした。 「ん……いっちゃん?」 あ、やば。 どうやらお母さんを起こしちゃったみたい。 外に出て着ればよかった。 シャカシャカと特有の音をたてながら キッチンでレインコートを着ていたあたしは ドアをスライドさせて居間を覗き込んだ。
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