808人が本棚に入れています
本棚に追加
/1202ページ
「はーい。じゃあ行きますよー」
全くもって緊張感のない王子の合図で、
2人の距離がぐっと縮まる。
ちゃんと見届けようと思ったけれど、
やっぱり殴りあう瞬間は直視できなくて、
思わず目を瞑って顔を背けた。
次の瞬間。
フェンスを唸らせる音が耳に入った。
「……うっ……」
次いで微かなうめき声。
穂鷹の言葉通りなら、もう勝負はついたはずだ。
続いて殴りあう音も声も聞こえてこない。
ほっと胸を撫で下ろして、固く閉ざしていた瞼を開こうとした時――
「へーえ。まだ立ってられんだ? さっすがだねー」
静寂を破って耳朶を震わせた声に、
あたしは目を瞠った。
最初のコメントを投稿しよう!