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「はーい。じゃあ行きますよー」 全くもって緊張感のない王子の合図で、 2人の距離がぐっと縮まる。 ちゃんと見届けようと思ったけれど、 やっぱり殴りあう瞬間は直視できなくて、 思わず目を瞑って顔を背けた。 次の瞬間。 フェンスを唸らせる音が耳に入った。 「……うっ……」 次いで微かなうめき声。 穂鷹の言葉通りなら、もう勝負はついたはずだ。 続いて殴りあう音も声も聞こえてこない。 ほっと胸を撫で下ろして、固く閉ざしていた瞼を開こうとした時―― 「へーえ。まだ立ってられんだ? さっすがだねー」 静寂を破って耳朶を震わせた声に、 あたしは目を瞠った。
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