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網膜を通して見渡せる景色が真実なら、
「う……そ。……ほたか……?」
フェンスを鳴らしたのは穂鷹の体だったってことになる。
穂鷹は背中を丸めて片方の手でお腹を押さえながら、
もう片方の手を膝に置いて、立っているのもやっとの様子だ。
少し肉厚の唇を苦しげに歪めて、
それでも鋭く尖らせた眼差しで、王子を睨みつけている。
対峙する王子は息も乱さずに、忌々しいほど涼しい顔をして
言い放った。
「まだ続けますかー?」
「……たりまえだ。これくらいで勝負がついたと思うな」
言いながら左足を踏み出して、
腰の捻りと共に振り出された穂鷹の拳を
王子は寸でのところで交わして、
驚くほどの速さでみぞおちに右の拳を打ち込んだ。
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