808人が本棚に入れています
本棚に追加
/1202ページ
あたしは両手で耳を塞いだ。
けれど
塞いだところで漏れ聞こえる音は
容赦なく耳に流れ込んでくる。
蹴散らせるように頭を左右に振りながら
震えて掠れる声を絞り出した。
「……めて……もうやめて……」
「俺と付き合ってくれるなら止めてあげる」
「NOだ!」
「だーかーらー。北川クンには聞いてないって」
「まだ勝負は……ついてねえ……」
「いい加減に諦めなよ」
その声に続く、肉と肉がぶつかるオト――
ぎゅっと目を瞑るあたしの傍らで、
ガチャリとドアノブを回す音がした。
目を開くと、重い金属製の扉が
ふぉんと空気を唸らせて勢いよく開く。
「な……」
扉を開いた勢いのまま屋上に飛び出してきた宮本が、
眼前で繰り広げられている展開に息を飲み込み
瞳を最大限に見開いた。
最初のコメントを投稿しよう!