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「タカ……」
「大丈夫だ、まだやれる。
それより。衣舞を頼む」
一瞬、瞳を細めて心配げにあたしを見た穂鷹は、
次の瞬間にはすっと表情を引き締めて、
立ち上がったままぼんやりしている王子の肩を左手で掴んでいた。
「よそ見する暇はねえぞ」
「え……? っ……」
こちらに目を向けたままだった王子が
咄嗟に体をよじる。
けれど、
穂鷹の打撃を完全には避けきれずに
腹部をかすめた拳の衝撃に、
ここに来て初めて整った面貌を痛みに歪めた。
「イブちゃん。タカは死なないよ」
隣にしゃがみ込んだ宮本は、
震える肩を自らの腕で抱きしめるあたしに
宥めるようにそう言うと
背中にそっと掌をあてがった。
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