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「大丈夫だから。息、ゆっくり吐いてみな」
知らず浅い呼吸を繰り返していたあたしの背中を
深い呼吸を促すように、ゆっくりと上下する宮本の掌。
その間も圧倒的に穂鷹が劣勢の殴りあいは続いている。
過呼吸気味だった息が整って、ゆっくりと目を閉じると、
下瞼に溜まっていた涙がぽろぽろと零れ落ちた。
「喧嘩は嫌い。喧嘩なんか大嫌い」
「うん。知ってる。イブちゃん。
本当の君は皆が噂するような子じゃないのにね」
ぽたり・ぽたり――
穂鷹の鼻から赤い液体が
あたしの目から溢れだす涙のように零れ落ちる。
頬を殴られて放射線を描く飛沫も
それを作りだす王子の拳も
みんなみんな
チノイロ――
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