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ごめん穂鷹。 「宮本?」 「うん。どうした?」 もう限界。 「ごめんね?」 あたしは短くそれだけ告げて ふらりと立ち上がった。 目尻のタレた双眸が僅か見開かれる。 「イブちゃん?」 恐らく、反射的に こちらへ伸ばされた指先をかわして、 あたしは口の端を上げた。 「イブちゃん。ダメだ」 予想の範疇を大きく裏切る展開に宮本も混乱しているのか、 引き止める声には力がなく、 あたしを見上げる瞳が戸惑いに揺れている。 「穂鷹を頼むね」 宮本は悔しげに唇を噛んで、 ためらいがちにあたしの手首を掴んだ。 「ダメだ」 弱いコエ。 これ以上 長引かせるのは無意味だって・・・・・・ きっと宮本もそう感じてるんだよね? あたしは反対の手で緩い拘束を解いて、 一歩、また一歩。 足を進めた。 「もう止めて。西園寺」 穂鷹のシャツの胸元を左手で掴んでいた王子が 右手の拳を解いてこちらに目を向ける。 「ん? 俺と付き合うってこと?」 「止めろ、衣舞!」 顔を血で染めた穂鷹の制止は あたしの耳の傍らを素通りするだけ。 一歩、また一歩。 足を進めた。
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