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穂鷹のシャツを掴む手を上から握りこむと、
色白の面に赤い水玉を散りばめた王子が
蕩けるような笑みを浮かべる。
「どうする、イブ? 俺と付き合うなら
この手、放してあげるよ?」
「――うん」
「止めろ。衣舞。冷静になれ」
低い、低い声で穂鷹があたしを窘める。
うん。冷静だよ?
アタシ――
「西園寺と付き合うよ」
「交渉成立」
「ダメだ。撤回しろ」
シャツの胸元から離れる王子の左手首を掴み
穂鷹はその動きを自ら止めている。
「衣舞!」
あたしは穂鷹に目を向けて、
黒曜石のような瞳を覗き込んだ。
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