◆4◆

13/17

808人が本棚に入れています
本棚に追加
/1202ページ
あたしは冷め切った表情を面貌に貼り付けて 苦しげに眉根を寄せる穂鷹へ向けた。 「約束を破ったのは。穂鷹だよ?」 声を低くして告げると、 どこまでも澄んだ黒い瞳が悲しみに揺れ 王子の腕を掴んでいた両手が力をなくして離れていった。 だらりと下ろされた無骨な指先に目を向けると、 なぜだか急に胸の奥がぎゅっとなった。 こんなシーンにふさわしいセリフはなんだろうと、 そんなまともなことに考えを巡らせたところで、 欠陥人間のあたしに探し出せるはずもなくて、 あたしはくるりと踵を返して穂鷹に背を向けた。 目を閉じて、 乱れた呼吸を整えた後、 ゆっくりと開いた両目で屋内へ続く扉を見据える。
/1202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

808人が本棚に入れています
本棚に追加