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背後に響いた扉の閉まる音に、あたしは足を止めて、
ゆっくりと深い息を吐きだした。
ほんの数十分前にここを訪れた時には
想像すらしていなかった結末に
いまだ思考が順応できてないみたいだ。
考えなければならないことは、
きっとたくさんあるはずなのに
頭の中が茹ってるのか、
逆に冷め切っているのかさえも
よくわからない。
「イブ。行くよ?」
立ち止まったままぼんやりとするあたしに、
差し出された王子の手。
視線を落として
顔を
背けた。
男子にしては細くて長い指。
水仕事なんかきっとしたことのない綺麗な手。
だけど、この手は微塵の躊躇もなく
人を傷つけることができるんだ。
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