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スクールバッグをいったん足もとに置いて 慣れない低いシートに埋もれるように座り、 シートベルトを装着すべくあたふたしていると、 運転席に乗り込んできた王子が 突然あたしに覆いかぶさってきた。 えっ? いきなり? 唖然と目を見張ったあたしの傍らで。 シュッ。カチン。 素早くベルトが装着されたのでした。 「あ……りがとう」 「どういたしまして」 エンジンを掛けた王子は、 滑らかに車を発進させながら 一瞬だけこちらに視線を流して言った。 「ところでイブはさ。 最初にOKしたってことは、 車に乗ることが怖いわけじゃないんだよね?」 「うん」 「じゃあ。なんで急に電車で帰るなんて言い出したの?」 「それは――」 どう言ったら、王子に伝わるんだろう。
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