54人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうもありがとう」
精算を終え、売り場の隅まで来ると、少年は寂しげに笑って、虹模様の紙に包装され、真っ赤なサテンのリボンで結ばれた箱をリサに差し出した。
「これは、君のだよ」
七色の箱を持つ小さな手は顔と同じチョコレート色だが、この前、家に来た配管工のおじさんたちとそっくりな指をしている。
「さっきのおつりから、僕が払った分だけ返してくれればいいから」
そう語る大きな黒い瞳は赤いリボンの結び目の辺りに漂っていた。
ママが見せてくれた黒ダイヤみたいな目だな。
「どうして男の子なのに、バービーを欲しがるの?」
人形よりも、自分の新しい服を買えばいいのに。
少女は心の中で付け加える。
よその人の身なりについてあれこれ言ってはいけない、ともパパはいつも話している。
「入院してる妹に上げたかったんだ」
少年の目が自分より頭半分だけ背の低いリサに注がれた。
この子、いくつなんだろう?
背丈は頭半分しか違わないのに、ずいぶん大きく見えた。
リサの思いをよそに相手は寂しく微笑んで首を横に振る。
「バーゲンでもなきゃ、こんな高いお人形は買えない」
最初のコメントを投稿しよう!