窓辺の猫

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ドン! ドン! ドン! 叩く音ですぐあいつと分かる。 「()いてるわ」 あたしが言うが早いか、扉がバン、と弾けるような音を立てて開いた。 「よう!」 阿建(アジェン)は満面の笑顔で、膨らんだ紙包みを掲げる。 「今日は洋梨(ようなし)買ってきたぜ」 中身が何でも、このにきびだらけの真ん丸い笑顔を目にすると、それだけで気持ちが晴れる。 「本当?」 この前、一緒に店の前を通りかかった時にあたしが洋梨に見入っていたのをやっぱり隣で気付いていたのだ。 ずいぶん物欲しい顔をしていたんだろうな。 彼ははちきれそうな笑顔のまま頷く。 「さっそく、酒盛にしよう」
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