窓辺の猫

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「これ、まだ早かったみたいだな」 剥いた梨の最後の一切れを口に放ると、彼は苦笑いする。 「ちょっとね」 答えるあたしの舌の上にも、青臭い甘酸っぱさが残っていた。 洋梨を食べたのは初めてだが、これが食べ頃でないのは何となく察しが付く。 「よく確かめないで買ってきちゃったからさ」 阿建は苦い笑いのまま、湯呑に口を付ける。 その動作でいつの間にか湯呑の底に(ひび)が入っていたと気付いた。  今度、またこいつが来るまでには買い換えよう。 「次は、林檎(りんご)がいいな」 たぶん、彼も食べたいはずだから、ねだってみる。 「この食いしん坊」 彼があたしの額を指で小突いた。 「あんただって」 すぐ近付いた彼の口から青っぽい洋梨の実の匂いがする。 味と香りは一緒みたい。 「薇薇(ウェイウェイ)……」 彼の声が甘くなって、二人は口づける。
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