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白い皮のソファー。作り込まれた調度品と、緩いオレンジの証明。広い広い室内はとても普通では見る事なんてないくらいの高級感 けど、俺はこの部屋を知っている 「あの日に撮ったんですか…」 「そうだよ」 あそこで撮影があったから、そう言って。静かに食事したくて、そうも言って。あなたは確かに俺が勘違いするような事は何一つ言っていないよね 「…凜」 だからって、これはないんじゃない?恋人とカメラの前で思いっ切り触れ合って囁き合ったあの部屋で。もしかしたらスタッフが撤収した後に肌を絡めたかも知れない場所に呼んでいた。あの日たくさん話した事や優しく滑る丹吾さんの全てを、まだ全然忘れずに思い出せるのに 「ひ、く……っ」 演技は皮一枚剥げばあっと言う間に元の自分。こんなに無防備なままで、これ以上何の役も演じれない。体も心も、塞ぐ事を放棄したように震え、その振動は眼球を潤ませて留まる事無く、零れた
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