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魅沙の反応が無い。
呆れているのだろうか。
余りに突飛な事を言い出す俺に、愛想を尽かしてしまったのかも知れない。
それを。
魅沙の表情を確認するのが怖くて、俺はそっぽを向いたまま。
その時。
ふわり。
微かな風が吹いて。
俺の頬を、長い髪が撫でた。
魅沙の香が、強く感じられる。
「マサ。」
いつの間にか。
魅沙は再び俺に接近して。
耳元で、囁いていた。
「いいじゃん、それ。」
「・・・!」
驚いたのは、俺の方だった。
おまけに。
いつか感じた事のある。
頬に、柔らかい、感触。
「み、魅沙!?」
「そっかぁ~!」
振り向いた時には。
魅沙は逃れるように、軽く駆け出していて。
「そっか、そっかぁ!」
何故か。
ホント、何でかは解らないけど。
さっきの何倍も嬉しそうな顔で。
くるくる。
くるくる。
ダンスを踊るように、身を翻す、魅沙。
「あははは!そっかぁ!」
笑いながら、笑う魅沙を見ながら。
本当の魔法使いは、この魅沙なんじゃないか、と。
そんな事を考えていた。
その証拠に。
ほら。
俺はきっと。
魅沙の魔法に、かかっている。
多分。
この先。
ずっと解けない、魔法。
「ねぇ、マサぁ!」
魔法使い様のお呼びだ。
俺は若干急ぎ足で。
そちらへと歩き出した。
[完]
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