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「人間の発想、想像が及ぶ物は必ず存在可能性を内包し、現代の常識では測れない物だとしても、一概に否定されるべき物では無い。」
母道子のドヤ顔がウザい中、魔法中年の講釈は続く。
「私はそう言った、一般的に未解明な事象に対して、魔法と言う先人の知恵の一つを拠り所としたアプローチを試み、更にはそれを活用可能な手段としたい、と考えております。」
『ん?』
父公一は、その時、何故か俯いて、ぼそっと何かの言葉を呟いた。
マイクには捉え切れてなかったようだが。
その唇の動きから察するに。
ソレガ カレヘノ ツグナイダカラ
・・・意味が解らん。
「ふーむ。」
突然、大学教授、猪瀬光男氏が立ち上がった。
「あなたの話を聞いていると、ある一人の男を思い出しますな。」
教授先生は、どこか遠くを望むような眼差しで語る。
「学説が突飛過ぎて、とうとう学会から追放された、私の大学の同期なんだが・・・或いは、本当の天才とは、ああ言う物なのかも知れんなぁ。」
「それは、もしかして。」
父公一、ちょいと眉を吊り上げる。
「只野喜一博士の事ですか?」
「し、知っているのかね!?」
「い、いや、まあ・・・」
父公一にしては珍しく、少しだけ言葉を濁す。
「有名人ですからね、彼は。著書、学術論文は、恐らく全て目を通させて頂いたかと思います。」
「ぜ、全部かね!?」
「はい。」
「か、感想は!?感想を聞かせてくれ賜え!」
「現代科学的知識の範疇での理解は難しいでしょうが、可能性を否定し切れる物では無い。そう感じましたね。」
「おお!」
教授先生、何故かやたらに興奮し、父公一に駆け寄った。
「先程から思っていた!理論に破綻無く、理路整然とした弁論!君こそ、真の智者だ!」
「いや、それ程でも・・・」
「君のような人間の出現を、私は長年待っていたのだ!出来れば、私の研究を手伝って貰いたい!」
ええ?
ナニソレ。
教授先生、父公一の手を握り締めている。
「な、何なのよ!?あのオッサン!」
と、急に母道子、立ち上がって憤慨し始めた。
「公一さんはそう言う趣味はありませんからね!男同士なんて・・・不潔よぉッ!」
・・・状況はどんどん凄い事になって行くにも関わらず、母道子だけは平常運転で何よりだ。
何より。
アホだ。
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