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「ほらほら!アレアレ!」
「ふぇ!?な、何だよ魅沙!」
「もう!人の話聞いて無いの、マサぁ!」
実は今現在、俺はそれ所では無かったりする。
いや、それ所、ではあるのだが。
てか、それ所が原因っつーか。
魅沙と俺。
互いの気持ちを確認してからの、始めての、二人きりのお出かけ。
所謂一つの、おデート、と呼ばれる現象だ。
待ち合わせ場所に5分程遅れて来た魅沙は(俺が30分前に到着していたのはナイショ)。
デニム地のミニスカートに、薄緑のTシャツ、淡いピンクのカーディガン、と言った出で立ちで。
・・・それがまた、言葉を失う程・・・
良く似合っていた。
そして。
何時ぞやのように、何の躊躇も無しに、俺の腕に自分のそれを絡めて来やがりくさった日にゃあ、もう大変だ。
普段、制服では分からない、意外とボリュームのある膨らみが密着して・・・
俺の耳には、自分の心音が大音響で鳴り響き、魅沙の声も聞き取り辛いような状況、と言う、つまりそう言う訳だ。
「ほら!見て!」
魅沙の指し示す方向に向き直る。
と。
「あー。」
「あっちにも!あ、あっちにも!」
魅沙は、はしゃいであちこちに指を向けて行く。
その、悉くに。
黒尽くめの集団。
怪しげな魔法陣。
魔法用品の広告。
「これ、みーんなマサのお父さんが発端なんだよねぇ!」
あれから、二ヶ月。
猪瀬教授に招聘され、大学に赴いた父公一は。
何と、大学で教鞭を取り、学生達に魔法学の講義をする事となってしまっていた。
その授業内容に感銘を受けた学生達を中心に、魔法ブームが巻き起こり、現在のような異様な光景が広がるように、なってしまったのだ。
魔法を馬鹿にしよう物なら、むしろその方が非常識な無知と笑われてしまう(因みにあの東大卒と無職は、最近テレビに全く出ない。アゼルバイジャン辺りに引っ越したんだろうか)。
「・・・でもさ。」
俺の脳裡から、暫し腕に伝わる感触が消えた。
「確かにそうなんだよな。常識って色眼鏡は、時々、真実を隠しちゃう事もあって・・・”不可能”とか、”できっこない”って、諦める為の言い訳みたいになる事もあって・・・」
「どしたん?マサぁ。」
「え・・・ん・・・あ!」
魅沙の声で、俺は。
その、押し付けられている物体の事を思い出し。
大いに、狼狽した。
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