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「ん~?」
「い、いや、その・・・さ。」
ぐい、と顔を寄せ、俺を覗き込む魅沙を、正視出来ない。
「何だよぉ。内緒の事なの?」
「そ、そーゆー訳じゃ・・・」
察してくれても良かろうに。
お前がそーやって更に密着するから、その、感触とか匂いとか、目の輝きとか・・・
「んっ!んんっ!」
咳払いで、少し頭を冷やす。
火照りは治まらない物の、若干の思考能力が俺ちゃんの脳で復活する。
「・・・俺、小さい頃、さ。」
「うん。うん。」
「科学者になって・・・ある物を発明しよう、って思ってたんだよ。・・・常識とか知識とか増えるごとに、出来っこないって諦めちゃってたんだけど。」
「マサが科学者ぁ!?」
「・・・おかしいか?」
「ん~んっ!ぜ~んぜん!そう言えば、マサは頭いいもんね!ただ・・・」
「ただ?」
「初耳だぞぉ。その話~!」
「まぁ、誰にも言った事ねーし。」
「え?じゃあ・・・」
「ん?」
「私が、一番最初にそのマサの夢、聞いたんだ。」
「あー・・・まあ・・・そう言う事に・・・なる・・・かな。」
「そっかぁ~!」
「お、おい魅沙!?」
魅沙は何故か顔を真っ赤にして嬉しそうに笑いつつ、更に密着・・・
てゆーか。
これは”抱き締められてる”って現象だ。
コイツの辞書には”人目を憚る”って言葉は無いんだろうか。
いや、人目が無ければいいとかじゃ、無い・・・い、いいのかな・・・
「す、少し離れろよ!」
「へっへ~。」
俺の灰色の脳細胞が桃色に染まるギリギリで踏み止まり、魅沙を引き剥がす。
それでも俺の顔色を確認した魅沙は、どうやら満足のようだ。
「ど、どんな夢でも、さ。」
半分誤魔化し。
半分真面目。
俺は話を再開した。
「非科学的とか、非常識とか言って否定するのって、それこそ”非科学的”なんだよな。」
父公一の、あの日の講釈は、俺にも多大な影響を及ぼした。
そして。
幼い頃に仕舞っていた夢が。
また、音を立てて動き出してしまったのだ。
「で?」
「な、何だよ。」
「志村雅博博士は、何を発明したいんだって?」
「・・・タイムマシン。」
「え?」
「タイムマシン。」
「・・・」
「・・・」
笑わば笑え。
そんな気持ちで、俺はそれを応えた。
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