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シノブの遺書と遺体が見つかったのはそれから三日後だった。
焼身自殺。葉月は直接見たわけではないが、酷いものだったらしい。
行方不明の届け出は出ていた。葉月の家にも家族から何度も連絡があった。
葉月は行方不明になった当日、シノブがこの部屋に来ていたことに気づいていた。
シノブは葉月の部屋に来ると必ず二人の交換日記に痕跡を残すのだ。
そこには紛れもなくシノブの筆跡が残っていたのだ。
葉月はシノブは自殺ではないと直観していた。動機もない。
葉月は由香の話も聞いていた。自分の手でケリをつけるため、緑と繋がりがあり、棟方家を破滅に追いやろうとした消費者金融に乗り込むつもりでいた。
警察が取り合ってくれない。事件性はないの一点張りだった。
シノブの家族からも葉月はそっぽを向かれた。
激しく罵られ、回忌はおろか墓前の墓参りすら未だに表だって許されていない。
葉月は鬼畜の心のまま、一人消費者金融に向かう。新しい能力を秘めたままに…。
都会の入り組んだビルの細い路地。ゴミ箱の上に腰かけたあの仮面が静かに葉月に笑いかける。
「どいて、私はいま忙しいの…」
イラついたらように葉月は一瞥すると仮面の横を素通りしようとした。
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