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「葉月。君の憎んでも憎みきれない相手は緑のはず…。違うかね?」
「そうよ、だからそのためにあいつらをまず潰すんじゃない!!邪魔をしないで」
葉月は妖しいトパーズを尖らせ、銀の騎士へ向けた。
ーーー緑など造作もない。私から全てを奪い去ったあの女になど情の一欠片(ひとかけら)も与える必要などないのだ。
八つ裂きにしてもし足りない。火だるまにしてもし足りない。この世の地獄すべて味わせてもし足りない。
「ーーー一つだけ君に断っておこう。葉月、君のその能力(ちから)は、私との契約の上に成り立っている。従って、君が私を消し去れば当然君はその能力を失うことになる。私を花に変えてもしかりだ…。そして、いま君が向かおうとしている極悪人の巣だが…。君が手を下すまでもない。誰かが代わりにやるものだ。君の知らない誰かがね…。因果応報のツケとはすなわちそういうことなのだよ」
銀の騎士はゴミ箱から飛び降りると、黙って葉月が進もうとしていた方角を指差した。
一つの雑居ビルから火の手が上がり、爆発音と地鳴りのような振動が葉月にも伝わってきた。
そこは、葉月が向かおうとしていた雑居ビル。まさに、極悪人の巣と称した一室だった。
けたたましいサイレンと人の声。明るくなる炎の宴に葉月は呆然と立ち尽くす。
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