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「おうおう?二人で真昼間から職場でいちゃいちゃかあ?へっへへへ。若社長も隅に置けないねえ」
下卑た笑いで葉月の去った立ち位置に秋夫が納まった。大柄で上から富永を見下ろすスキンヘッドは威圧的でもあった。からかわれた富永は二三秋夫を見上げながら、何か告げると、珍しくむっとした顔でその場を後にした。
まだ、見足りないようにその場で愉快そうにしている秋夫を肩越しにそっと目をやった葉月には秋夫の背中にとりつき、無表情で秋夫の顔を覗きこむ髑髏(むくろ)の姿が映った。
葉月はその姿を一瞥すると、再び前を向き直り、台車を静かに押して、片づけを済ました。
人の明日なんて、不確実なものだ。いつ何時何があるかなんて誰にもわからない。わからないからこそ、平気で他人を嘲(あざけ)ることができるのだ。
葉月はワゴンに乗り込む前にポケットからタバコを取り出すと、メンソールの煙を一つくゆらせた。煙は葉月に賛同するように体をくねらせながら各々の意思とは裏腹に娑婆の空気に身を潜めていく。
そして、大きく一つ息を吐き出した時、もう片方のポケットからミッションを知らせる携帯の音が鳴り響いた。
葉月はポケットから携帯を取り出すと、銀の騎士からメールをさっそく確認し始めた。
ゆっくりと文面を辿りながら指でページを繰って行く・・・。
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