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「葉月は高校卒業したらどうするか決めた?」
シノブは長い髪を一本に束ねていた。バレーボールで鳴らした背の高さとスタイルは葉月を凌ぐものだった。
キラキラした瞳は葉月より切れ長でありながら愛嬌のある優しさを含んでおり、葉月は彼女の目を見るたび、花と対峙しているような安らぎを覚えていた。
「ううん。どうしよかな」
葉月は左のブレザーの袖を反対の手で撫でながら、空を見上げた。
いつもの河原の土手に腰掛けて二人。下校中にお喋りしていた。
「どうしよかなって、もうじき夏よ。夏を越えたら秋、そしたら冬…。あっという間じゃない。のんびりにもほどがある」
「そんなこと言ったって…。シノブが専門学校行くなら私は短大でも行こうかな…」
葉月は決めかねていた。進学も専門学校にいくのも金がかかる。父はお金を工面するというが、継母の緑がそれを許さない。
高校まで出してやるのだから、有難いと思え、働きにでて、家に金を入れるのが筋だというのだ。
窮屈な家を出て、一人暮らしでもしようか…。
継母の嫌な顔を拝まずに済むのに越したことはない。せいせいする。
そうなると、やはり進学より自然就職ということになりそうだ。
ただ、気掛かりなのは父のことだ。最近、めっきり痩せてしまった。
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