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「ーーー葉月、聞いている?」
シノブの言葉に葉月は我に返り、シノブの顔を見た。
「き、聞いてるよ。シノブはブライダルプランナーになるんだもんね」
葉月は取り繕うように話の矛先をシノブに変えた。
シノブは苦笑いしながら、葉月の頭を撫で、抱き寄せた。
「そうよ。人の幸せ一杯手助けするの。それで私も沢山幸せになれるから…。お金貯めて独立したら葉月のお花屋さんから沢山注文するんだから」
「シノブ、私まだ花屋やるなんて言ってないわよ」
葉月は慌てて否定しながらシノブの顔を見た。
「だーめ。葉月が優柔不断だから私が決めてあげたの。って言うか、ずっと前から決めてあるの」
シノブはそう言うと葉月から離れ、立ち上がった。制服のスカートの皺を伸ばすのを見ながら葉月も同じように立ち上がる。
「葉月やばい、スカートめくれてる」
シノブが葉月の後ろに回り込んで注意する。
「え、やだ。恥ずかしい」
葉月が顔を赤くしてスカートの後ろを両手で寝かしつける。
その様子に、シノブがにやつきながら、葉月の顔をじっと覗き込む。
「嘘だよ」
「シノブ!!」
騙されたとわかり、葉月はシノブを追いかけ回す。河川敷の土手を二人で賑やかに走り抜けた。
葉月にとって一番楽しい時間であった。
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