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家に着く頃には、ひどい降りとなっていた。
青い空と憎らしき太陽はすっかり厚く黒い雲に覆われ、台風のような雨風となっていた。
葉月は、ワゴンからたった数歩の距離しかない店の入口に入るまでに頭から靴まで濡れてしまった。
気を効かせた由香がバスタオルを持って葉月の元に駆け寄る。
葉月はありがとうと言ってバスタオルを由香から受け取ると、長い髪を丁寧に拭き始めた。
「お姉ちゃん遅かったね、どこか寄り道?」
由香は、葉月から拭き終わったバスタオルを受け取り、洗濯機の方へ向かった。
「ええ、ちょっとシノブのところへ」
葉月は濡れてしまった靴下を居間に上がる前に脱ぎ出した。
「23日…。たち命日か…。行くんなら私にも言ってほしかったな…」
葉月の靴下を由香は籠で受けると、再び洗濯機の方へ向かった。
たち命日とは、月は違うが日にちが命日と同じ日にあたる日のことをいう。
シノブは9月23日に亡くなっている。だから違う月の23日がシノブのたち命日ということになる。
「あれは絶対自殺なんかじゃない…。絶対あいつらの仕業なのに」
戻ってきた由香が不意に涙ぐむ。
ーーー轟音と共に稲光が走り、一拍置く形で電気が落ちた。
落雷による停電のようだ。由香は悲鳴と共に震えながら葉月の胸に飛び込み、嗚咽を始めた。
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