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「カイザーです...」
震える声を抑えながら、カイザーは言葉を振り絞った。ミネロと呼ばれた老婆は、それを確かめるようにしてカイザーの顔を触り、形を確かめていく。次第に老婆の閉じた目から涙が溢れだし、カイザーと同じように頬を濡らした
「あんれま…本当だ。あんたは死んだんじゃなかったのかね…おらはそう聞いたんだけども。でもね、帰ってきてくれて嬉しいよ。カイ坊…」
カイ坊とは、シケットに住んでいた年長者からのカイザーの愛称である。王を愛称で呼ぶなど普通は許されないが、シケット王国の特徴が垣間見える部分だろう
「ミネロさん、これは一体…」
「シケット王国は、悪魔皇帝によって荒らされたんだ…男、女、子供、老人関係なく皆殺し…そして、そのシケットを丸ごと吹き飛ばしちまいやがったのさ…。おらは急いで逃げてて足を踏み外して川に落ちちまった…そこで気を失って気が付いたら、シケットの外の川辺で倒れてたんだ」
そのミネロの言葉からカイザーの頭の中である言葉が思い浮かぶ
人間の魂と魔力を必要とする…そう、【勇者の召喚】だった
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