一章

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「吸血鬼だな」 二月も終わろうという寒空の下、木枯らしが吹きすさぶ並木道のベンチに俺と早乙女は腰掛けていた。 何が悲しいのか男二人で大学の購買で買ったパンを貪り、まだ温かい缶コーヒーを啜っていると、通勤列車の偉そうなジイサンみたいに週刊誌を広げていた早乙女の声が乾いた空気を震わせた。 平穏な大学生活にはあまり聞き慣れない単語だ。 「また急だな。吸血鬼が何だって?」 「ああ、どっかの森の近くで重度の貧血で倒れてた人が病院に搬送されたらしい。 大きな外傷はなく現場周辺にも出血の跡はなし」 「へえ」 素っ気なく答える早乙女に素っ気なく返す。 たまにはそんなこともあるだろう。 興味なし、話はそれで終わり。 「なあ、吸血鬼っていると思うか?」 ところが早乙女は話を続けた。 昔から変なところに興味を持つのは相変わらずと言ったところか。 「さあ、いたら面白いけどな」 「可能性は高いぜ」 「は?」 そう言って早乙女は週刊誌から俺に視線を移す。 その目は新しいおもちゃを見つけた子供のようだ。 こうなると俺も興味を持ち出すところだが、今回は生憎題材が悪い。
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